春夏秋冬〜季節を感じとけ〜
ファンタジーを少々。

陰陽1−6

「――――――――だから、――――――――――」
この人はどのくらいしゃべっているのだろうと壁にかかっている時計をちらっと見る。
そこには6時半をさしていて、大体3時間くらいしゃべっていることになる。
そんなによくしゃべる気力があるものだと感心してはいるが、話自体は全く聞いてなかった。
「――なわけであって、―――――――」
最初の何分かは一応話を聞いていたが、それ以降に校長が何を話していたのかは全くと行っていいほど頭の中に入っていなかった。
激しい父の影響で真面目な顔をして話を全く聞かないという行為は慣れていたが、あまりにも話が長すぎる。
話を聞かないでいるという行為にさえ、面倒になっていた。
「―――ってわけなんだけど………って聞いてた?」
「……微妙に。」
あれから3時間半がたち、一応話は済んだようだ。
この地獄から解放されるという感情がとても多く、さっさと席を立とうとした。
「あっ…さっさと逃げようとしても無駄だよ。これは一日ですむ話じゃないんだ。」
まだつづくのか。
それしか頭に無かった。
「それに……朝岡君、全く話聞いてなかったでしょ?」
今まで誰にもばれたことがなかったのに今日はじめて人にばれてしまった。
校長も変な性格はしているが、人を観察する力はあるらしい。
「はぁ。まぁ……そうですね。」
「うーん……困ったねぇ。」
「校長」
最初に一言しゃべってから全く何もしゃべってなかった教頭がやっと割り込んできた。
流石に生徒を何時間も学校に閉じ込めるわけにはいかないのだろう。
このままだと徹夜になりかねないと感じたのかは分からないが、桂にとってはこの状況から逃げたい。
ただそれだけだった。
「聞く気がまったくないのに話しても無意味だと思うのですが。」
そのとおり。まさしくそのとおりだ。
よく言った。その言葉を教頭にかけてやりたい。
「そうかぁ……うーん……」
教頭の言葉に校長はなにか考え出した。
別に教頭の言葉を聞いて少し考えたら普通、答えは一個しかない。
桂はその一個の考えをまっていた。
だけど、その考えは一気に崩れ去ることになる。
「じゃあ、浅岡君の家に行こう☆」
この瞬間、桂ははじめて人をぶん殴りたくなった瞬間だった。

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  1. 2005/08/27(土) 21:41:28|
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陰陽1-4

「“適合者”って……何ですか?」
「適合者とは、『うまくあてはまること。よくかなうこと。』(適合)が人間に当てはまった状態のことである。ばーい第5版広辞苑より。」
そんなことを言って欲しかったわけではなかったので、桂はどうしたらいいか分からなかった。
そして桂の言った質問に辞書の言葉を何もひかずに言った校長に何秒かの沈黙が起こってしまった。
「えーっと……そういうことが言ってほしかったのではなくて…」
「校長。話が脱線しそうになりつつあります。」
このままだといつ終わるのか分からない話を尽かさず教頭が突っ込みを入れる羽目になった。
この教頭の言葉により、話は脱線せずにすむ。
「ある“鈴”の存在について、君は知っているかね?」
普通の鈴ならば知っているが、校長の言う鈴はそういうものではないらしい。
聞いている限り、それもかなり凄い鈴みたいだ。
真剣に話をしたいらしいので、とりあえず続けてみることにした。
「……いえ。」
「陰と陽に別れている鈴のことだ。
……ところで“太極図”というものを知っているかね?」
桂はここで確信した。
あと1時間以上は家に帰れないな…と。


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  1. 2005/05/14(土) 18:47:12|
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陰陽1-3

様々な授業が終わり、HRも必要事項だけ担任がいう。
すると学級委員がいつものように号令をかけ、学校サイクルが終わっていった。
特に部活に入ってなかった桂は帰る準備をしていた。
「浅岡。ちょっとだけいいか?」
いつもならばこれから帰る準備をし終わったら下駄箱へいき、上履きを中へ入れて帰るというサイクルが崩れてしまった。
そんな桂を呼び出したのは担任の先生でもクラスメイトでもなく、何故か教頭先生だった。
桂自身ではなんて微妙な地位の人が来たんだと思ってしまったが、相手には漏らさないように営業用の顔を保っていた。
普通、こういう場合は教頭先生ではなく担任や、放送室から流すアナウンスから呼ばれるものだ。
なのに直接、しかも教頭先生ときている。
校長先生よりはましな気はするが、どちらも気持ちだけであまり変わらなかった。
「はい……。」
とりあえず、その場で呼ばれて思ったことは“俺の名前知ってたんだ……”だった。
場違いな感想だったにもかかわらず、そこに目が言ってしまうのは些かどうなのだろう。
桂は荷物を置いていこうとすると、教頭に持ってっていいといわれてしまった。
仕方なく荷物を持って校長室の前まで案内をされた。
教頭は中へ入らずに桂を先に中へ通す。
「君が朝岡君か?」
「えっ……あぁ、まぁ。多分。」
少し緊張していたのもあるかもしれない。
このときに“多分”といったのは、ありえないかもしれないが、自分が養子だったらということもあるしという又も場違いな考えから出てきたものだった。
「はっはっは。安心したまえ。浅岡という人物はこの学校では君しかおらんよ。」
心の中で“知ってたんならいうなよ。”という言葉があったかどうかは本人しだいだが、桂はずっとポーカーフェイスを保ったままだった。
「しかし今回は生徒としての君ではなく、“適合者としての君”を呼んだのだよ。」
校長の意味の分からない言葉に桂はポーカーフェイスが崩れかけてしまっていた。


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  1. 2005/05/10(火) 23:07:56|
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陰陽1-2

桂は現役の高校生であるために、電車で2駅ほどの私立高校に通っていた。
ゆっくり行ったとしてもせいぜい20分ほどでついてしまう距離なのだが、何せ家の中があの状態なので家にいることも出来ない。
桂にとって学校とは逃げ場に等しかった。
「桂、今日も早いね。」
校門に入ろうとしたときに横からの声が聞こえた。
ちらっと見てみると運動部の朝練なのかジャージ姿でうっすらと汗が見えた。
「家にいても仕方ないからな。」
「確かに。あの家凄いもんねー。」
この女子は寺本 加絵(てらもと かえ)、桂の幼馴染である。
小学校からの付き合いではあるが、中々に気の合うやつだった。
実は桂の家にも泊まったことがある。
普通はそういう日は少しでも気を使うのかもしれないが、朝岡家はそういう気を使うことも全く知らない。
なので、加絵自信もあの家の苦労は良く分かっていた。
「朝練だろ?早く行けよ。」
「うん。じゃ、またあとで。」
加絵は校門の外を走り出した。
その姿を大して見送りもせずに校門の中へ入っていく。
歩いて階段を登ってもほとんど生徒の姿はなかった。
廊下を歩いているときに一瞬だけ教室のなかを見ても大体1〜2人くらいしかいない。
自分の教室へ行っても誰もいなかった。
朝練をしている人たちも荷物は多分部室へ置いているのだろう。
「………」
窓側にある席に座ってまずはぼーっと外を眺める。
空は雲がきれいに散らばっていて、下にある校庭では男子サッカーをやっていた。
家の中があんななだけにこの今の状態がとても喉かで幸せなひと時だった。
5分間くらいそうやっても大抵だれも来ないので、課題をやることにした。
この流れもいつものことで、誰も気にする人はいない。
英語の辞書を手に取り、教科書とノートを開く。
宿題となっていたところにしるしがしてあったため、そこを開いて訳を考え始めた。
ここでやっているおかげで家で宿題等をやったことがない。
それから20分くらい経ち、チャイムがなる5分前くらいからぞろぞろと人が入り始める。
桂に対しおはようと声をかけてくるやつもいれば、無視して他のやつに話しかけるやつもいる。
そうして一日が始まっていった。


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  1. 2005/05/04(水) 18:59:39|
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陰陽1-1

朝の7時丁度に、朝岡 桂(あさおか けい)は目を覚ました。
普通ならば目覚まし時計がなり、その音に無理やり起こされるのが普通なのだろうが、桂は違った。
その原因は、これからくる“ある物”に起こされまいとする必死の行為から成り立っていた。

カンカンカンッ!

目を覚ましてから1分も経たずに原因のものが出てきた。
本当は、なる寸前に耳を塞いでいるため音が不明ではあるが、ふさいでいないとその後頭が麻痺するほどに五月蝿い音のために耳をふさぐしか方法はない。
「おーいっ!朝だぞー!!」
この尋常じゃない音を鳴らしている本人は桂の父親である、朝岡 裕次郎(あさおか ゆうじろう)であある。
最初は凄く抗議をしたりしていたのだが、本人にとってはコレが一番良い起こし方なのだという。
確かにこの音を聞くまいと早く目覚めることが出来るのはうれしいが、目覚めた後にこの音が来ても不快な音でしかない。
「………うるせぇ音だな。」
今となっては抗議をすることさえ諦めてしまった自分に少しでも気分が紛れるようにほんの小さい声で反撃するしかなかった。
そんな反撃も聞こえていないために反応するひとも当然いない。
少し寂しくなった桂は、のんびりと起き上がって支度を始めた。
もちろんそんな中でもあと1時間はその音が鳴り止むことはなかった。


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  1. 2005/04/26(火) 22:19:19|
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